『たちぎれ』古典落語の名作 上方落語の演目の一つ。別名「立ち切れ (たちぎれ) 線香」「たちきり」。 江戸時代に笑話集「江戸嬉笑」の中に収められた「反魂香」を元につくられた、。 初代松富久亭松竹の作とも。上方で主に高座にかけられ、その後東京でもかけられるようになった。3代目 桂米朝以下、米朝一門の持ちネタであるほか、女性の登場する噺を得意とした5代目桂文枝の口演が有名であった。近年では笑福亭鶴瓶の口演が有名。東京では3代目春風亭柳好や8代目三笑亭可楽らが主な演者である。 あらすじ 前編・若旦那、蔵に監禁 とある船場の商家。ここの若旦那が友達に誘われていったミナミで出会った置屋「紀の庄」の娘で芸妓・小糸に一目惚れをした。それまで女を知らず働いていた大人しく誠実な若旦那、たちまち小糸に入れあげるようになってしまった。 店の金にまで手をつけるに至り、親族会議の結果、番頭の案により店の蔵に百日押し込め、二人を逢わせないようにした。怒り狂う若旦那に対して番頭は理路整然と対応し若旦那はやむを得ず蔵に入ることになる。 しばらくして小糸の店から手紙が来る。番頭が受け取り若旦那に見せないようにした。当然若旦那からの返事はない。次の日、明後日、明々後日と手紙は来る。一枚二枚四枚八枚と来る。しかし返事はない・・・の繰り返しで、店の前に店の小者目当てに屋台ができるほどに来ていた手紙が、80日で来なくなった。 番頭これを見て「色街の恋は80日か、冷たいもんやなあ・・」 後編・解放、そして衝撃の事実 そして百日が過ぎ、若旦那が蔵から出てきた。店と若旦那への忠義からこのような処置をした番頭に恨みの言葉をかけるでもなく、むしろ感謝の意を示した若旦那、外に出たいという。 その前に・・と番頭、若旦那に溜りまくった小糸からの文を見せた。その最後に、 この文をご覧に相なりそうろう上には 即刻のお越しこれ無き節には 今生にてお目にかかれまじくそろ かしく 小糸 とあった。 若旦那さっそく天満へ出かけるといって、丁稚を連れて出かけていった・・が、途中で丁稚を撒き、紀の庄へ。 若旦那はそこで店の女将から位牌を出され、「位牌なんてもろても・・・ん、俗名小糸・・小糸!?」 そう、小糸は死んでいた。若旦那が蔵に押し込められる前日、芝居を見る約束をして、楽しみにしていたが来ない。文を出す。来ない。その繰り返しで、店の芸者や従業員まで協力して物量作戦で文を出したが来ない。そのうちに小糸は恋煩いをこじらせ、何も食べ物を受けつけなくなり、あの最後の文を出した次の日、若旦那が誂えてくれた三味線を弾いて、死んでしまった・・・。 という事実を聞かされ、若旦那、号泣。始めは若旦那の不義理をなじった女将も、事情を知って若旦那を許す。たまたま今日は小糸の三七日(みなぬか)、これも何かの縁と、位牌と三味線を仏壇に供え、手を合わせたその時! 友達の芸者が「小糸ちゃんの三味線、鳴ってる!」何と誰も弾くことなしに、三味線から若旦那の好きな地唄の「雪」が流れてきたのであった。若旦那これを見て泣きながら「病気と知っていたら蔵を破ってでもお前のもとに行ったのに・・小糸、許してくれ。私は女房子供の名のつくものは絶対もたん、所帯もたんで!」と誓った。女将も涙にながら「まあ、若旦那はん、よう言うとくんなはった・・・小糸、聞いたか。成仏しとう。なあ。」と呼びかける。 その時、小糸の(霊が弾いていた)三味線の音が止まった。不思議に思って仏壇を見ると・・・。 「若旦那、いくら言っても小糸、もう三味線弾かしまへんわ」 「なんでや」 「仏壇の線香が、たちぎれでございます」