『無名の医師の言葉に感動』(ブログ 7月30日)

人との出会いが人生を変える出来事について先日、届いたメールをご紹介します。

ドイツの哲学者カントのお話です。

馬の蹄鉄(ていてつ)屋の子に生まれた。
生まれつきの、くる病であったカント。

背中に瘤があり、乳と乳の間は僅か二インチ半、脈拍は絶えず百二十~百三十、喘息で、いつも苦しげに喘いでいた。

ある時、町に巡回医師がやってきた。
少しでも苦しみを和らげられたら、と父はカントを連れて診せに行った。

診てもらってもどうにもならないことは、カント自身も分かっていた。

そんなカントの顔を見ながら、医師は言った。
その言葉がカントを大哲学者にするきっかけとなったのである。

「気の毒だな、あなたは。  しかし、気の毒だと思うのは、 体を見ただけのことだよ。 考えてごらん。 体はなるほど気の毒だ。 それは見れば分かる。
 だがあなたは、心はどうでもないだろう。心までもせむしで息が苦しいなら別だが、あなたの心はどうでもないだろう。
 苦しい辛いと言ったところで、この苦しい辛いが治るものじゃない。
あなたが苦しい辛いと言えば、おっかさんだっておとっつぁんだって
 やはり苦しい、辛いわね。
 言っても言わなくても、何にもならない。 言えば言うほど、みんなが余計苦しくなるだろ。
 苦しい辛いと言うその口で、 心の丈夫なことを喜びと感謝に考えればいい。
 体はともかく、丈夫な心のお陰で、あなたは死なずに生きているじゃないか。

 死なずに生きているのは丈夫な心のお陰なんだから、それを喜びと感謝に変えていったらどうだね。

 そうしてごらん。私の言ったことが分かったろ。
 それが分からなければ、あなたの不幸だ。
 これだけがあなたを診察した私の、 あなたに与える診断の言葉だ。

 分かったかい。

 薬は要りません。 お帰り」

 カントは医師に言われた言葉を考えた。

「心は患っていない、それを喜びと感謝に変えろ、とあの医師は言ったが、俺はいままで、喜んだことも感謝したことも一遍もない。
それを言えというんだから、言ってみよう。
 そして、心と体とどっちが本当の自分なのかを考えてみよう。

 それが分かっただけでも、世の中のために少しはいいことになりはしないか」

大哲学者の誕生秘話である
 (宇野千代著『天風先生座談』より)。

 

健康とは、健体(すこやかな体)と康心(やすらかな心)のことである。

体を健やかに保つこと。それは天地から体を与えられた人間の務めである。

そしてそれ以上に大事なのが、心を康らかに保つことだ。
体が丈夫でも心が康らかでなかったら、健康とはいえない。

いや、たとえ体が病弱でも心が康らかなら、生命は健やかである。

これは人間個々から小さな組織、国家まで、あらゆる生命体にいえることであろう。

カントの逸話は私たちにそのことを教えている。
 

■今日の言葉

人間は安楽に満足して生きたいと思うが、自然は人間が安楽と無為の満足に甘んじさせずに、苦労や労働に打ち勝つ手段に知恵をしぼらせようとして、苦労や労働の中に人間を放り込む。

[カントの名言・格言|自然は人間を逆境に放り込む]

 

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